犬のフィラリアは人間にもうつる?知っておきたい感染リスクと家族を守る予防の話
「犬のフィラリアって人間にもうつるの?」
「うちの犬がフィラリアに感染していたけど、家族への感染は大丈夫?」
「フィラリアは犬の病気だと思っていたけど、子どもがいるから心配」
フィラリアについて上記のような不安を感じたことがある飼い主さまは多いのではないでしょうか。
この記事では、犬のフィラリアが人間に感染するリスクや予防策について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬と人間の健康を守るために役立ててください。

そもそもフィラリアとは?犬での感染のしくみ
よくフィラリアと呼ばれる犬糸状虫は、蚊を介して犬の体内に入り込む寄生虫です。
フィラリア症とは、犬の体内にフィラリアが入り込む病気です。
成長したフィラリアが犬の心臓や肺の動脈に住みついた結果、さまざまな症状が出ます。
フィラリアが犬に感染するしくみ
フィラリアが犬に感染するしくみは以下のようなものです。
まず、フィラリアに感染した犬を蚊が吸血することで蚊の体内にフィラリアの幼虫が入ります。
そのフィラリアの幼虫をもった蚊が別の犬を吸血することで、刺された犬の体内にフィラリアの幼虫が入り込んで感染する仕組みです。
犬の血液に入り込んだフィラリアの幼虫は徐々に大きくなり、心臓や肺動脈に寄生しながらたくさんの幼虫を生みます。
これらの幼虫が成長していき、血管や心臓に大きな負担がかかり続けると、呼吸困難や心不全など命に関わる深刻なトラブルに繋がります。
フィラリア症は、感染初期で少数寄生の場合は無症状ですが、多数寄生や慢性感染の場合には心不全の徴候が現れることもあり注意が必要です。
犬にとっては命に関わる深刻な病気ですね。
犬のフィラリアは人間にもうつるの?

犬のフィラリアは人間にも感染することがあります。
ただしフィラリアが人に感染するルートは、感染犬を吸血した蚊が人を吸血するという順序のみです。
フィラリアに感染した犬に直接触れたり、一緒に寝たりすることで人にうつるわけではありません。
日本国内では、1964年に人への感染第1例が報告されて以来、現在まで90例を超える報告があります。
人間に感染したら何が起こる?
人間にフィラリアが感染しても、犬のように心臓に住みつくことはほぼありません。
人間の体内は犬と異なり、フィラリアにとって生息しにくい環境です。
フィラリアの幼虫は人間の体内に入っても、大半は成長できずに死滅します。
ただし、一部のフィラリアの幼虫は成虫になる可能性があり油断はできません。
人間の肺に寄生したフィラリアが結節を作ると、咳や胸の痛みなどの症状につながる恐れがあります。
また、肺から皮膚や目に移動してしまうと、皮膚の下のしこりや視力障害などの症状が現れることもあります。

人の場合、フィラリア症の治療はどうなるの?
咳や胸の痛みが続く場合は、呼吸器内科または内科を受診しましょう。
人がフィラリアに感染していた場合は、胸のレントゲン検査で肺に異常な影が見つかることがあります。
必要があればCT検査や組織検査などのさらに詳細な検査が行われます。
ただし人のフィラリア感染は基本的には経過観察のみで、ほとんどの場合は治療が不要です。
症状が強い場合や悪性腫瘍と見分けがつかない場合は外科的摘出が行われることもありますが、術後の経過も良好なケースがほとんどです。
また、人間の場合は自然に治癒するケースが大半で、死亡例もほぼ報告されていません。
愛犬の予防が家族全員を守ることになる
愛犬をフィラリアから守ることは、飼い主さま自身や家族を守ることにもつながります。
フィラリアが人に感染するルートは、感染犬→蚊→人です。
つまり、犬がフィラリアに感染しなければ人が感染するリスクが低くなります。
犬のフィラリア予防は、犬自身を守るだけでなく、家族全員を守るための予防策です。
犬にフィラリア薬を飲ませるのを忘れる、という小さなミスが犬だけでなく家族全員への感染リスクにも影響します。
大阪でのフィラリア予防時期はいつからいつまで?

大阪で犬のフィラリア予防は4月から12月頃まで続けることがおすすめです。
フィラリアの予防薬は蚊を寄せつけない薬ではなく、犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆虫する薬です。
フィラリアは蚊の体内に潜伏し、吸血時に犬に移動することで感染します。
犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除してくれるのが、フィラリアの予防薬です。
フィラリアが犬の体内で幼虫から成虫になるには1〜2ヶ月かかります。
そのため蚊が活動し始める1ヶ月後から薬を始めて、蚊が見られなくなってから1ヶ月後までは薬をあげる必要があります。
大阪府下の感染の可能性がある期間は5月はじめ〜11月中旬になりますので、4月から12月頃まで続けることがおすすめです。
ただし最近は気候の温暖化により、蚊の活動期間が長くなっていることから、時期を限定せず1年を通して予防を行う通年予防が標準化されつつあります。
また、ビルやアスファルトが多い都市部は昼間の熱が夜までこもりやすく、気温が高いままです。
こうしたヒートアイランド現象によって、蚊が活動しやすい環境が長く続き、フィラリア感染のリスクも高まります。
当院のある城東区・鶴見区エリアのような都市部では、通年予防も選択肢のひとつとしておすすめです。
フィラリアの通年予防について詳しくはこちらをご覧ください。
【豆知識】あの西郷隆盛もフィラリアに感染していた!

幕末・明治維新の英雄、西郷隆盛も実はフィラリアの感染者だったとされています。
鹿児島出身の西郷隆盛は、薩摩藩主・島津久光の怒りを買い、奄美大島そして沖永良部島へと2度の島流しを経験しました。
当時の奄美大島はリンパ系フィラリアの流行地だったため、そこで感染したと推測されています。
西郷隆盛が感染したフィラリアの種類は、犬が感染する犬糸状虫とは異なるバンクロフト糸状虫という、人のリンパ管に寄生するフィラリアの一種です。
バンクロフト糸状虫は感染後数か月で成虫になるとリンパ節に集まり、リンパ管を詰まらせます。
これによって皮膚や皮下組織が異常に硬化し、象の皮膚のような外観になります。
これが西郷隆盛にもみられた象皮病です。
陰嚢が赤ちゃんの頭ほどにまで腫れ上がる
西郷隆盛も晩年は病気によって陰嚢が人の頭ほどに腫れて馬に乗れないため、いつもかごを使っていたと言われています。
西南戦争に敗れた西郷隆盛は、別府晋介の介錯で自害し、その首は見つからないように隠されました。
首のない遺体を西郷と決定づけたのは、フィラリアが原因で腫れ上がった下半身だったということです。

犬フィラリアとは別物だけど、蚊が媒介するのは同じ
西郷隆盛が感染したバンクロフト糸状虫は、犬のフィラリアとは異なる種類です。
しかし、同じ糸状虫のなかまで蚊が媒介する寄生虫という点は、犬のフィラリアもバンクロフト糸状虫も共通しています。
バンクロフト糸状虫は人から人へ、蚊を介して感染するもので、昔は人に寄生するリンパ系フィラリア症も全国的に広がっていましたが、現在の日本ではすでに根絶されています。
よくある質問(FAQ)
犬がフィラリアに感染していた。直接犬から人にフィラリアはうつる?
いいえ、直接はうつりません。
感染ルートは、感染した犬→蚊→人間の順番で、蚊が媒介しない限り人には感染しません。
感染した犬と触れたり、同じ部屋にいるだけでうつることはないので、その点は安心してください。
室内で飼っている犬がフィラリアに感染することはある?
感染することがあります。
フィラリアを運ぶのは蚊であり、室内にも窓や玄関から蚊は侵入します。
完全室内飼いの犬がフィラリアに感染した例も報告されているため、屋内外を問わず予防が必要です。
猫もフィラリアに感染する?猫のフィラリアも人間に感染する?
猫もフィラリアに感染することがあります。
猫のフィラリアは犬と同じく蚊が媒介しますが、犬よりも感染数は少ないとされています。
猫のフィラリアについても人への感染リスクがゼロとはいえないため、猫を飼っている方もフィラリア予防を検討することをおすすめします。
まとめ
犬のフィラリアは、蚊を介して人間にも感染し得る人獣共通感染症、すなわちズーノーシスの一種です。
日本での人への感染報告は90例以上、うち約75%が肺への偶発感染で、多くは無症状か軽症で重症化する例はほぼないとされています。
人への感染ルートである、犬のフィラリア感染を防ぐことが人への感染予防になります。
愛犬のフィラリア予防が、家族全員の感染リスクを下げる最善の対策です。
大阪では4月から12月頃までの予防が推奨されていますが、1年中予防薬をあげる通年予防もおすすめです。
フィラリア予防についてご不明な点や薬の処方については、お気軽にご相談ください。


大阪市城東区鶴見区の動物病院
城東鶴見どうぶつ病院
森ノ宮みどり動物病院
この記事の監修獣医師
院長 脇谷俊佑

麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
大阪市内動物病院 勤務
城東鶴見どうぶつ病院 開院
近畿動物医療研修センター 画像科研究生
獣医教育・先端技術研究所(IVEAT)腹部超音波検査研修 修了
日本獣医がん学会 所属



