犬の虫刺されにムヒを塗っても大丈夫?虫刺されの対処法と蚊・ノミ・マダニのリスクまとめ
「犬が蚊に刺されたらムヒを塗ってもいい?」
「虫刺されっぽい跡があるけど、人間用のかゆみ止めを使っても大丈夫?」
「犬がかゆそうなのでムヒを使っていい?」
人間用の痒み止めであるムヒですが、上記のように犬に使っていいのか悩む方は多いでしょう。
今回は犬へのムヒの使用について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬に虫刺されがみられたときの参考にしてください。

ムヒの成分と犬への影響
ムヒは虫刺されやかゆみに使われる塗り薬です。
ムヒには以下のような成分が含まれています。
- ジフェンヒドラミン:痒み止め成分
- イソプロピルメチルフェノール:殺菌成分
- ℓ-メントール:清涼感成分
- d-カンフル:清涼感成分
このうち犬でとくに注意が必要なのがメントールとカンフルです。
メントールは大量摂取で消化器粘膜の刺激となることがあります。
カンフルも嘔吐や下痢などの消化器症状や中毒につながる危険性があります。
そもそもムヒは人間向けに設計されたものです。
人間の皮膚を基準に作られたムヒは、人の1/3ほどの厚さしかない犬の薄くデリケートな皮膚には刺激が強すぎることがあります。
また犬は塗った箇所をすぐ舐めてしまうため、ムヒを塗った意味がなくなるうえに成分が体内に入るリスクも否定できません。
舐めた量が少しであれば大きな問題には繋がりにくいですが、大量になると身体に負担がかかります。
さらにムヒは種類によってステロイド成分が含まれているものもあります。
犬の皮膚にステロイドを自己判断で使用することは、感染を隠してしまったり症状を悪化させたりするリスクがあるため、動物病院での処方薬以外の使用は避けることが大切です。
ムヒの成分を考えるとムヒを犬の虫刺されに使うのはおすすめではありません。

犬がムヒを舐めたらどんな症状が出る?
犬がムヒを舐めた場合、いろいろな成分が体内に影響する可能性があります。
少量であれば問題ないことがほとんどですが、大量に舐めたり長期間舐め続けたりすると以下の症状が出ることがあります。
- 嘔吐
- 下痢
- 元気消失
- 痙攣
このような症状以外にも心配なことがあれば早めに動物病院に相談しましょう。
犬に虫刺されがあるとき、ムヒ以外に自宅でできることはある?

犬に虫刺されがあるときにムヒを使わないとなると、どんなことができるか疑問に感じる方もいるでしょう。
自宅でできる応急処置として、患部を冷やすことが最も安全で効果的です。
清潔な濡れタオルや布でくるんだ保冷剤を患部に当てることで、炎症やかゆみを和らげることができます。
この方法だと薬を使わないため犬が舐め取るリスクもなく、皮膚への刺激も少なく済みます。
ただしこれはあくまでも一時的な処置です。
かゆみへの根本的な解決には、動物病院で処方される薬が有効です。
かゆみが長引くようであれば一度診てもらいましょう。
犬は蚊に刺されること自体が大きなリスク
そもそも犬にとって蚊に刺されることは、かゆみだけでは済まない問題です。
犬が蚊に刺されて起こる問題で最も大切なのはフィラリア症です。
蚊がフィラリアの幼虫を持っていると、その蚊に刺された犬がフィラリアに感染するおそれがあります。
フィラリアは成虫になると犬の心臓や肺動脈に寄生し、血管や心臓に大きな負担となります。
フィラリア症は放置すると呼吸困難や心不全につながる深刻な病気です。
そのため犬が蚊に刺された傷跡を気にするより、その蚊がフィラリアを持っているかどうかを心配しなければなりません。
室内飼いの犬でも蚊に刺される可能性は十分にあります。
蚊は玄関の開閉や網戸の隙間、人の出入りなどを通じて室内に侵入できます。
また、マンションの高層階であっても蚊が飛んでくることはあるでしょう。
これが、ほとんど外に出ない犬でもフィラリア予防が必要とされる理由です。
犬の虫刺され対策として最も重要なのはフィラリア予防薬

犬の健康にとって虫刺されの跡にムヒを塗ることよりも、フィラリア予防薬を毎月しっかり飲ませることの方が重要です。
大阪では蚊の活動時期に合わせ、毎年4月〜12月が標準的な予防期間の目安となっています。
ただし近年の温暖化により蚊の活動期間が延びていることもあり、通年での予防を推奨する声も増えています。
フィラリアの年中予防について詳しくはこちらをご覧ください。
ノミ・マダニも同時に予防すべき理由
蚊への対策を考えるなら、ノミ・マダニへの対策もセットで考えることが大切です。
散歩中に草むらを歩いたり、公園の芝生に座ったりする機会があると、ノミやマダニが寄生するリスクがあります。
ノミもマダニもかゆみ以外の病気を引き起こす可能性があり対策が必要です。

ノミが引き起こすリスク
犬がノミに寄生されると、強いかゆみをともなうノミアレルギー性皮膚炎を起こします。
また、ノミが媒介する瓜実条虫にも注意が必要です。
グルーミングの際にノミが口から入ると、犬の小腸で瓜実条虫が増えて下痢などを起こします。
これらは人にも感染する人獣共通感染症です。
ノミは毛の奥に隠れているため、目視で気づいたときにはすでに大量繁殖していることも多い害虫です。
マダニが引き起こすリスク
マダニによって感染する病気には犬の命に関わるものもあります。
とくに注目されているのは、犬だけでなく人での死亡例も増えているSFTS、すなわち重症熱性血小板減少症候群です。
SFTS以外にマダニが媒介する病気として、バベシア症、ライム病などもありますね。
これらの病気に対してマダニに効く予防薬を定期的に使用しておくことが感染予防につながります。
マダニは公園の草むらや野山に潜んでいます。
寄生されてもかゆみがないため、気づきにくいのが難点です。
猫の記事ですがSFTSについて詳しくはこちらをご覧ください。
市販のノミ・マダニ薬より動物病院の処方薬が確実
「ドラッグストアやホームセンターで売っているノミ・マダニ薬でいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、市販の駆除薬は動物病院で販売しているものと比べて、有効成分の違いや全身への広がりの弱さなどが指摘されています。
市販のものは安いかもしれませんが、頻繁に使用する必要があったり駆除率が低かったりするとも言われています。
せっかく費用をかけて予防薬を使うのなら、動物病院で処方してもらった方が確実です。
よくある質問(FAQ)
犬に虫刺されの跡がある。人間用のムヒを使ってもいい?
使わない方がいいです。
ムヒは犬にとって刺激が強いため、使用はおすすめできません。
かゆみが出ている場合は動物病院で薬を処方してもらうなどしましょう。
犬がムヒを舐めてしまった。大丈夫?
大丈夫とは言い切れません。
少量のムヒを舐めただけでは問題ないことがほとんどですが、大量に飲んだり長期間舐め続けると身体に負担がかかる可能性があります。
元気がなくなったり嘔吐や下痢などの症状がみられる場合は動物病院で診てもらいましょう。
犬はフィラリア予防薬を飲んでいれば蚊に刺されない?
いいえ、刺されます。
フィラリアの予防薬は蚊を寄せつけないための薬ではなく、蚊に刺されてフィラリアに感染した場合にフィラリアの幼虫を駆除するための薬です。
そのためフィラリアの予防薬を飲んでいる犬でも蚊に刺されることはあります。
まとめ
ムヒは人間用の塗り薬で、犬にとっては刺激になることがあります。
犬に虫刺されを見つけたとしてもムヒは塗らない方が良いです。
犬が舐めたりして意味がなくなってしまううえに、ムヒの成分が大量に体内に入ると身体に負担もかかります。
そもそも犬が蚊に刺された場合、かゆみよりもフィラリア症の方が重要です。
フィラリア症は犬だけでなく人にも感染する病気です。
予防薬を使用してしっかり予防しておきましょう。
フィラリア症の人への感染リスクについて詳しくはこちらをご覧ください。


大阪市城東区鶴見区の動物病院
城東鶴見どうぶつ病院
森ノ宮みどり動物病院
この記事の監修獣医師
院長 脇谷俊佑

麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
大阪市内動物病院 勤務
城東鶴見どうぶつ病院 開院
近畿動物医療研修センター 画像科研究生
獣医教育・先端技術研究所(IVEAT)腹部超音波検査研修 修了
日本獣医がん学会 所属



