犬の歯のグラグラは歯周病のサイン?放置が危険な理由・治療について解説
「犬の歯がグラグラしていた。これって大丈夫?」
「老犬になってから歯がグラついているけど、年のせい?」
「グラグラしている歯を見つけたらそのままでいいの?」
犬の歯がグラグラしていたら上記のような疑問をもつ飼い主さまは多いのではないでしょうか。
この記事では、グラグラした歯を放置するとどうなるか・動物病院での治療などについて詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の歯がグラグラしているときの参考にしてください。
犬の歯がグラグラする原因

犬の歯がグラグラする原因は、年齢によっても異なります。
ライフステージ別に考えられる原因を解説します。
子犬の場合:乳歯から永久歯への生え変わり
生後3〜7か月頃の子犬の歯がグラグラしている場合は、乳歯が抜けて永久歯が生えてくる自然な過程であることがほとんどです。
犬の乳歯は全部で28本あり、それが42本の永久歯へと生え変わります。
この時期のグラつきは基本的に問題ありません。
乳歯が自然に抜けるのを待ちましょう。
成犬・老犬の場合:歯周病の進行
成犬の歯がグラグラしている場合は、歯周病が進行しているサインかもしれません。
歯周病は歯肉炎と歯周炎のことを示します。
歯肉炎は歯茎である歯肉に炎症が起こっている状態です。
これを放置すると歯周炎に進行します。
歯周炎では、細菌や毒素が歯周組織の奥まで入り込んで歯を支える骨が溶けていく状態です。
歯周炎まで進行すると骨が溶けて歯の支持力が失われ、歯がグラグラするようになります。
つまり成犬以降で歯がグラグラするという状態は歯周病が進行しているサインです。
また、歯周病は進行性の病気であり、放置すればするほど悪化していきます。
自然に治ることはありません。
グラグラしている歯を放置するとどうなる?

犬の歯がグラグラしているだけだから大丈夫、と油断していると深刻な状態になる可能性があります。
グラグラしている歯を放置すると以下のようなことが起こる可能性があります。
- 乳歯遺残となって歯周病の原因になる
- 歯を支える歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちる
- 根尖膿瘍が起こる
- 顎が折れる
- 全身に悪影響になる
乳歯遺残となって歯周病の原因になる
子犬で歯がグラグラしている場合、乳歯遺残に注意が必要です。
永久歯が生えてきても乳歯が抜けずに残っている状態を乳歯遺残と言います。
乳歯遺残があると歯並びが悪くなったり、歯垢や歯石が溜まりやすく歯周病を患う原因となるため、早期発見と治療が重要です。
乳歯遺残は小型犬に多い傾向があります。
永久歯が生えてきたのに乳歯が並んで残っている場合は、動物病院に相談しましょう。
多くの場合、避妊・去勢手術などの全身麻酔時に、残った乳歯を抜く処置が選択されます。
歯を支える歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちる
口の中で細菌や毒素が深部へ侵入することで、歯を支える歯槽骨が溶けてしまうため、歯が抜けることが多いです。
ここまで症状が進行してしまうと、歯周組織を完全に元に戻すことはできません。
歯が自然に抜けてしまう状態は、歯周病がかなり進行していることを示しています。
根尖膿瘍を起こす
歯周病がさらに進むと、根尖膿瘍が起こります。
根尖膿瘍とは、歯の破折や歯周病によって細菌や毒素が歯の根本にまで侵入し、膿がたまっている状態です。
根尖膿瘍が進行すると、膿がたまって目の下が腫れたり、顔が腫れて皮膚から膿が漏れ出てくる、などのおそれもあります。
急に目の下が腫れてきた・顔に穴が開いたという状態で来院されるケースがありますが、これは歯の根元の感染が顔にまで広がってしまった結果です。

顎が折れる
歯周病が重度にまで進行すると、下顎を骨折したりする可能性があります。
特に小型犬では顎の骨が薄いため、歯周病による骨の溶解が進むと骨折リスクが高まります。
全身への影響
歯周病は口の中だけの問題ではありません。
歯周病などの口のトラブルを持っている犬は、心臓や腎臓など、全身の病気につながるリスクが高いです。
これは歯周病による細菌や毒素が血液を通して全身にまわって影響するためです。
動物病院ではどんな治療をする?

グラグラしている成犬の歯の治療は、歯周病の進行度によって異なります。
歯肉炎は歯肉のみが侵された炎症で治療で治すことが可能です。
しかし、歯周炎まで進むと、歯肉以外の目に見えない歯周組織まで炎症が起きている状態になります。
ここまでくると治療では元の状態に戻すことができません。
全身麻酔下での歯科処置が必要です。
歯がグラグラしている段階では歯周炎がかなり進行していることがほとんどのため、以下の処置が必要になることが多いです。
スケーリング(歯石除去)
スケーリングでは全身麻酔下で超音波スケーラーを使い、歯の表面と歯周ポケット内の歯石を除去します。
グラグラしている歯の周囲の感染した歯周組織も処置します。
抜歯
以下のように、歯周病が重度に進行している場合は抜歯が必要になることがあります。
- 歯がグラグラしている
- 歯根まで炎症が進んでいる
- 歯茎や目の下などに穴があいて膿が出てくる
- 口から鼻に穴がつながって鼻水・鼻血・くしゃみなどが出る
抜歯と聞くと不安になる飼い主さまが多いですが、むしろ不要な歯を残しておく方が健康を損なうことにつながります。
なぜならグラグラしている歯を抜かずに残すことは感染源を口の中に置き続けることと同じだからです。
抜歯によって感染源を取り除くことが、愛犬の痛みを取り除き全身への感染拡大を防ぐための正しい選択です。
また、犬は抜歯後に歯が少なくなっても食事ができます。
むしろ悪さをしていた歯がなくなって食欲が戻り、元気になるケースは多く見られます。

歯周病にならないために
歯がグラグラするのは歯周病が進行しているサインです。
歯周病は自宅でのデンタルケアで進行を抑え、予防することができます。
子犬の頃から歯磨きに慣れさせるのが理想ですが、成犬になってからでも諦める必要はありません。
短時間で毎日少しづつ行うなどでも良いので、愛犬のペースに合わせて歯磨きを習慣にしましょう。
▼歯磨きの頻度など詳しいことについてはこちらをご覧ください。
ただ実際には、ホームケアだけでは取りきれない汚れや、歯周ポケットの奥の汚れなどが溜まっていくことも多いです。
動物病院での定期的なチェックや治療を受けることは、重症化する前に最適な処置を行い、犬の痛みや負担を最小限に抑えることに繋がります。
▼歯磨きについて心配事などがあれば、当院でのデンタルセミナーにもお気軽にご参加ください

よくある質問(FAQ)
犬の歯がグラグラしているけど痛がらない。様子をみていても大丈夫?
大丈夫とは言い切れません。
そもそも犬は痛みを隠す動物です。
歯がグラグラしている段階ではすでに歯周病がかなり進行していることが多く、見た目に痛がっていなくても口の中では深刻な炎症が起きている可能性があります。
早めに動物病院を受診しましょう。
成犬の歯がグラグラしている。自然に抜けるのを待ってもいい?
待たない方がいいです。
グラグラしている歯が自然に抜けることはありますが、それは歯周病がかなり進行した結果です。
自然に抜けた場合も歯根の一部が残っていたり感染が続いていたりすることがあるため、動物病院で確認してもらいましょう。
子犬の乳歯がグラグラしている。引っ張って抜いてもいい?
いいえ、自然に抜けるのを待つのが基本です。
無理に引っ張ると歯根が残ったり出血したりすることがあります。
永久歯が生えてきているのに乳歯が残り続けている場合は動物病院で相談しましょう。
まとめ
犬の歯がグラグラする原因はライフステージごとに異なります。
子犬の乳歯がグラグラしているときは自然に抜けるのを待ちましょう。
永久歯が生えてきたのに、乳歯が残っている場合は処置が必要になります。
成犬やシニア犬で歯がグラグラしているときは歯周病が進行しているサインです。
グラグラしている歯を放置すると様々な影響が出るため早めに動物病院に相談しましょう。
また、歯周病を進行させないためにも、日々のデンタルケアで愛犬の口の健康を守りましょう。


大阪市城東区鶴見区の動物病院
城東鶴見どうぶつ病院
森ノ宮みどり動物病院
この記事の監修獣医師
院長 脇谷俊佑

麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
大阪市内動物病院 勤務
城東鶴見どうぶつ病院 開院
近畿動物医療研修センター 画像科研究生
獣医教育・先端技術研究所(IVEAT)腹部超音波検査研修 修了
日本獣医がん学会 所属


